大事なのは、その人のことを思うこと。


たいせつに、たいせつに記憶をたどって、その人の輪郭を思い出すこと。


髪の毛、瞳の色、まばたきの仕方、何気ないしぐさ。






そうして初めて、その人の夢へ手を伸ばせる。










そう、かあさんもこんな風に、わたしに会いに来たんだ。


















思っていたよりもずっと簡単に、その場所へたどり着いた。

眠りの森と呼ばれる静寂の中は夜が訪れることがなく、

永遠に続く、まどろみにも似た光がゆらゆらと、葉の間から絶え間なく漏れる。


永遠。


エアリスはその例えを使った後、背筋がぶるりと震えるのを感じた。


この森ははるか昔、遠い遠い過去、古代種が旅をしていたその時からずっと、等しくゆらめきつづけているのだ。

長い長い時間の中に今、自分が生きていることがどうしようもなくちっぽけなことに思える。

わたしなんかがそこへ行ったとしても、何も変わらないかもしれない。

思った後、思考を遮断するようにエアリスは首を振る。




頭上から漏れる光を見上げ、エアリスは小さく深呼吸をした。




瞳を閉じて、ゆらめく光をまぶたに感じながら、思い出を順序良く振り返る。
方法なんか誰にも教わらなかったけれど、考えなくてもわかる、血が、そうだ、ってうなづいてくれる。




この光の色によく似た金髪、深くするどく、悲しいほどに透き通った瞳、ちょっと多めのまばたき、髪の毛を撫でる手のひら。
低い声、そぐわない幼い表情、骨ばった指先、ふと遠くを見る睫毛。
形を描こうとすればするほど、輪郭を撫でれば撫でるほど、曖昧で、儚い、淡い。
本当はわたし、クラウドの何も、知らない。








すう、と大きく息を吸う。








知らなくても、いい。知っていけばいいんだもの。













自分の意識が一つになっていく感覚。








体を覆う不思議な光を、皮膚の上に感じる。

エアリスはゆっくりと睫毛をふるわせ、瞳を空へ向けた。










心が、飛んで行く。