顔を見てから行こう、単純にそう思った。


最後の別れとか、さようなら、とか。
そういうのは全く考えていなかった。


ただ、もう一度。

この目に焼き付けておきたかった。


クラウドのこと。




クラウドは、あれから目を覚まさない。
ひとしきりわめいて叫んだあと、急に意識をなくした。
それからずっと、ここで眠り続けている。

一番奥の、カーテンで仕切られた部屋に入る。

しゃらりと音をたててカーテンをずらし、エアリスは一人で眠るクラウドのそばにしゃがんだ。


思わず、息をしているのか確かめてしまった。クラウドはそれくらい静かに眠っていた。 とじられた睫毛はわたしより長くて、なんだか瞳だけ見ると女の子みたい。

近くで見た事があまりなかったから、そんなことに気付いて小さく微笑む。



初めて会ったミッドガルの街角。
空から落ちてきた"なんでも屋"さん。
ゴールドソーサーでささやいた言葉。
古代種の神殿で見つけた意識。


クラウドと会ってから、わたしのすべてがめまぐるしく変化した。
見たことも聞いたこともないもの。たべたことのない食べ物や、さわったことのない海だとか。

"色は白いほうが好みだ"

無愛想につぶやく姿を思い出して、エアリスはまたほのかに笑って見せた。


「ほんとう?」


吐息だけの言葉でクラウドにたずねる。


きっと、これからも。
わたしはクラウドたちと一緒に、知らないもの見たことのないものを見つけに行くんだわ。


エアリスは瞳を細めてそう、確信する。


そしていつかきっと、
本当のクラウドに会いにいける。

そうしたらきっと、今度こそ言える。

ティファと一緒に、堂々と告白しちゃおうかな。


「覚悟しててよね、鈍感さん」


エアリスはそう言ってクラウドの鼻をつついた。
クラウドは眉毛を小さく寄せてむずがり、その姿を見てエアリスは声をあげて笑い出したくなる。





ふいに、キスをしたい気持ちに駆られたが、止めておいた。

もししてしまったら、ティファに対してフェアじゃないもの、エアリスは思う。

それよりも、クラウドの手を握り締めた。


自分のそれとは違う、骨ばったひとまわり大きな手のひらをにぎる。



トクトクと、脈打つ手首。


頬に摺り寄せて、ぬくもりを感じ取った。







あたたかく、やわらかく、ほのかに香る匂いは、クラウドのもの。

クラウド。


クラウド。


どれだけ呼んでも足りない。


いとおしい気持ちは飽くことなく、エアリスのすべてから溢れていた。



クラウド。

クラウド、クラウド・・・・・








わずかに音をたててカーテンを閉じる。

カバンがガチャリと音をたてた。


エアリスは一人、ゴンガガを出る。