エアリスはぱちりと目をあけた。 ゴンガガの夜。リリリと鳴く鈴虫の声が心地よい。 となりに眠るティファが目を覚まさないよう、小さな足音をたててベッドから立ち上がった。 この場所に来て、一番に感じたのはザックスのこと。 カタンと窓をあけて、夏の夜風を浴びる。 エアリスの髪の毛をやさしい風がすりぬけていく。 ふいに、頬が痛みを思い出した。 "おれは、 なにをした?" クラウドの声が耳にひびいた。 消え入りそうな声。無自覚に発せられた声。 なぐる手のひらはかたく握り締められて、ちいさく、震えていた。 蒼い瞳が見詰めるさきに、わたしの姿は無かった。 いっそ抱きしめる事ができていたら。 そのほうがずっと、ずっと楽だった。 エアリスは思う。 ゴンガガは優しい。 茂る緑も、照らす日の光も、ひっそりと生きる人々も。 痛々しい傷跡も残されたままだが、それすらもそこに生きる人たちの暖かさで薄れて見えるほど。 悲しみを帯びた優しさは、深い慈愛のように感じられた。 この村のそこらじゅうに、ザックスの面影を見つける。 ザックスはいつも優しくて、元気で、明るくて、何をしても嫌なところがなかった。 屈託の無いザックスと居ると、わたしは何でもできる気がした。 大きく深呼吸をする。 新しい空気は神聖で、肺からエアリスの身体を清浄にしてくれる気さえする。 エアリスは、自分の荷物を小さなカバンに入れて、肩に背負った。 ティファの額に小さくキスをして、ベッドを離れる。 今夜、エアリスは旅立つ。 ← → |